労働問題研究会主催 第36回女性労働セミナー「オンライン 日韓女性〈働き方改革〉シンポ ジェンダー視点で考える日韓の〈働き方改革〉とコロナ禍」(2021年9月12日)聴講レポート ~さっぽろ青年ユニオン 岩﨑委員長も登壇しました!~
日韓女性<働き方改革>シンポ ジェンダー視点で考える日韓の<働き方改革>とコロナ禍」(2021年9月12日)聴講レポート

9月12日、オンラインで開催されたシンポジウムに参加しました。第一部では、コロナ禍の女性労働者・労働運動にフォーカスした、韓国の登壇者お二人の報告が特に印象に残りました。以下は簡単な聴講レポートです。

ユン・ジャヨンさん(中南大学校経済学科准教授)

コロナ禍の韓国の労働者の状況、とりわけ女性労働者の置かれている状況についての報告で、日本の状況との共通点が多数あることが分かりました。
・宿泊飲食業、サービス業、卸業などの女性労働者元々多かった業種で雇用が激減した
・もともと女性労働者の雇用保険加入率は低かった所へのコロナ禍、政府の支援対策の対象にならず失業給付を受けられない人が多数出た
・なかでも10人未満の小規模企業で働く女性労働者が大きな影響を受けた
・韓国政府の政策対応は一定評価できるものの、雇用保険加入者中心の労働政策がベースとなっているなど、コロナ禍以前からの問題が浮き彫りになった
・韓国と日本で共通する点として、小規模事業者では「雇用維持支援金(※日本でいう雇用調整助成金など事業者を経由して労働者の休業補償を行う施策)」は当初活用がほとんど進まなかった
・ベビーシッター等「呼び出し型労働」ともいえる業態のケアワーカーは、サービス提供中断とともに所得もストップ。個人としては仕事がなくても事業所としては休業でないため、支援金等の対象とならなかったなどの問題点
・韓国政府の雇用政策はもともと、雇用の安定している労働者向けの者が基本だった。小規模零細事業所、また非正規雇用の労働者は支援を受けられず、コロナ禍で労働政策の「死角」が明らかになったとの指摘。

チョ・ソンジュさん(政治発展書)

コロナ禍の女性労働運動についての報告がありました。韓国の民主主義は「労働なき民主主義」と言われてきた。コロナ禍では「女性なき民主主義」が見えた。しかし一方で、コロナ禍で、女性労働運動が成果を上げている。
  コロナ禍以前から、労働政策が大企業男性中心だった韓国では、労働運動もまた「会社内」の運動だった。しかし労働政策のセーフティネットの枠外に置かれてきた女性労働者中心の運動は、必然的に「職場を超えた運動」として発展し、社会的な運動となった。
・セーフティネットの外側にやられている女性労働者が、日雇い労働に流れている
・子供の世話を家でしなくてはいけないのでフルタイムの仕事ができない
・韓国女性労働運動の特徴は、使用者を超えて、国や自治体に対して政策要求を積極的にしていること。コロナ禍以前からジェンダー不平等な社会で存在した問題。
・放送作家ユニオンは、番組打ち切りに伴う解雇をやめさせるため、特別労働監督を大手テレビ局に導入させることに成功。
・保険医療労働組合(医療労働者の74.5%、介護労働者の92.5%が女性)は、政府首相、長官への争議行為を行い、要求を受け入れるなど大きな勝利。ストライキは市民の大きな支持を受けた。市民のために医療体制を整えることが要求だったから。
・デパート免税店販売労働組合 コロナ禍でも無防備に開店され、対策されなかったために感染拡大。営業時間短縮、ワクチン接種を要求、勝ち取る。
・コールセンター 労組 低賃金長時間労働。在宅勤務困難りさまざまな労組が共同記者会見。正しい業務環境の基準を求めた。

このように、韓国では、非正規雇用の女性労働者が多数を占める業種で、コロナ禍に様々な要求運動が起こり、成果を勝ち取っています。この点が韓国労働運動の力強さであると感じました。

第2部では、各分野で活動している多彩な登壇者の一人として、さっぽろ青年ユニオン岩﨑唯執行委員長が登壇。

報告内容の一部を掲載します。

「このコロナ禍で、たくさんの人たちが、休業を強いられました。
法律で決まっている休業手当の基準は、実際元の収入の4割程度にしかならなかったり、そもそも休業手当をもらえなかった非正規労働者から連日相談が寄せられました。
最低以下の水準で働かせ、いざとなったらなんの補償の対象とも見ず切り捨てる会社と、それを放置する日本政府には、今まで以上に怒りが湧きました。
他方、今まで普通に楽しく暮らしていた人たちも、人との交流を断たれ、心病んでいく姿も目の当たりにしました。
日本国憲法が掲げる、「健康で文化的な最低限度の生活」がどれほど大切かわかりました。
コロナの中で、そしてコロナが収束したのちも、私たちは、何かあったらすぐに生活が破綻するような賃金水準では脆弱すぎるし、人との文化的な交流を営むためにはある程度の賃金も必要なのだ、それが生存権なんだと声を上げていきたいです。」

以上がレポートです。多種多様な分野で活動している人や団体が、ネットワークを形成し、労働運動を盛り上げていこうというエネルギーにあふれたシンポジウムでした。

2021/9/23


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